
日本の伝統的文化―武道―
日本の文化と言われたら、皆さんは何を想像しますか? 考えればたくさんありますが、「武道」と答える人は少ないような気がします。そこで今回は、武道についてお話します。
私自身の武道経験や、私が尊敬する武道家のお話を混ぜて武道の魅力をお伝えします。
11年の武道経験
初めての武道―極真空手―

私はかれこれ11年間武道を通じて学んでいます。
1番最初に始めた武道は極真空手 でした。きっかけは、両親の「空手の見学に行ってみないか」という一言で、誘われるがままに体験へ行ってみると、目の前でたくさんの人が本気で殴り合っていました。 当時の私にはそれが衝撃的で、今でもその時の光景を鮮明に覚えています。少しの恐怖を覚えながらも、当時小学1年生の私はとりあえず「やってみたい」と言ってしまいました。極真空手というと、数ある流派の中で、フルコンタクト(攻撃を直接相手にあてる)の流派として、名の知れ渡っているものだと思います。当然稽古は厳しかったですが、その中に面白さを見出し、真剣に稽古に取り組むようになりました。
稽古を通して、肉体的な強さはもちろんですが、礼儀作法や精神的な強さも身についたと感じています。小学1年生という時期から週に最低2日、多くて6日間の稽古を継続していました。「空手をやめたい」と思ったことも数えきれないほどあります。しかしそこでやめずに「初段を取るまでは続ける」という目標を達成できたことが今の私の支えになっています。それほど空手をやっていた6年間は、私の精神的な強さを成長させてくれました。


高校から始めた武道―弓道―

次に始めた武道は弓道です。弓道は高校の部活動として取り組んでいました。弓道は空手と比べると、珍しい武道の1つかと思います。実は弓道を始めたきっかけも「かっこいいからやってみなよ」という母親の一言 で、小学校から中学校の間のおよそ5年間やっていたバスケットボールをやめて弓道を始めることにしました。部活動なので、空手ほど厳しくはありませんでしたがそれでも武道を知るには十分でした。弓道というと、自分自身との闘いというイメージを持つ人が多いように思います。まさにその通りで、どれだけ稽古と同じことができるかがすごく大事です。極端な話ですが、毎回全く同じことができれば弓道で負けることはほぼありません。しかしそれが想像以上に難しく、例えば手のが数センチ違うだけであたらなくなります。 つまり、どんな状況でも落ち着いて自分の動きに集中できる精神力が求められます。

1カ月の経験―相撲―
これはおまけ程度で、武道人生にカウントできるほどのものではありませんが、小学6年生の時に1か月だけ相撲部として相撲もやったことがあります。1か月限定の部活動で、その月の末に、年に一度の大会が熱田神宮で開催されます。相撲部に入ったのは、空手に必要な足腰を鍛えることができるかもと思ったからでした。ただ、大会が熱田神宮で行われるという事で、ここでも礼儀作法を学ぶことができました。

武道を極めた?!―祖父の大きな背中―

私がこれほど武道に取り組んでこられたのは 、祖父の存在が大きいです。実は祖父も武道経験者で居合道 をしていました。居合道は、剣道のように対人して行うことはなく、真剣を用いた、演武を主とする武道です。祖父は八段(居合道の最高段位)を取得し、道場を持ってその指導も行うほどの実力者でした 。たくさんのお弟子さんから慕われていた祖父は、週に何回も道場を開け、その指導にも真剣に向き合っていました。そんな武の道を極めたといっても過言ではない祖父からも、私は武道を学びました(当時の私は空手をやっています) 。
祖父が居合道をやるときは、いつもの温厚な祖父とは一変し、鋭い目つきになり、その凄まじい気迫はまるで本当に敵に切りかかっているようでした。実際に相手はいないのに相手がいると錯覚すらしてしまうような祖父の演武は 、違う武道ではありましたが私の目標でした。どうすればその域にまで到達できるのか、たくさん考えました。当時の私は発見することはできませんでしたが、「武道に対する真剣さ」と「洗練された基本動作」が祖父の演武の柱だったと、今ではわかります。
9年ほど前に、祖父は病気を患ってしまい長い闘病の末亡くなりましたが、自分の体が動かなくなっても何とかして居合道に携わろうとしていた姿勢は、もはや恐怖を感じるほどでした。しかしそんな祖父は今でも私の武道の師範です。
武道の強さの秘訣
長い間武道に携わってきて、自分なりに武道の強さを見つけることができました。それは、高い集中力です。武道には共通して「残心」と呼ばれる動きがあります。残心とは、弓道で言うと下の写真のような動作のことで、(矢を放った後も的から目を離さない)様々な動作の後にある、簡単に言うと最後まで気を抜かないようにするための心構えのようなものです。この残心と、日々の稽古から身につく集中力が武道の心を支えるものだと思います。
試合開始の礼から試合終了の礼まで、気を抜いていい瞬間は一瞬たりともありません。しかしそれは容易なことではありません。それを追求することが武の神髄だと言えるでしょう。

終わりにー武道のかっこよさとはー

自分の武道人生を振り返って、改めて武の道を学ぶ人はかっこいいなと、強く感じました 。武道と真剣に向き合う人は、相手への敬意や礼節を重んじる姿勢を常に忘れません。その上で、身体的、精神的にどちらの方が強いかを正々堂々と競い合う姿は、心打たれるものがあります。近年では、日本の伝統的な文化の1つとして海外でも知れ渡り、オリンピックの競技にも選ばれました。もちろん体験しないとわからないこともありますが、インターネットで動画等を見ても発見できる面白さがあると思います。もし興味を持っていただけたら、動画で武道の試合の動画を視聴して、武道の奥深さを見出してみて下さい。