スプーンに一杯中身を取り出し、おそるおそるコーヒーの表面に落としてみる。煙を吹き上げたり緑色の生き物が這い出したりはしないことを確認してから、ゆっくりと渦をつくってかき混ぜる。アンチ・シュガーで甘みを打ち消したコーヒーの味はそう悪くなかった。
円城塔「エピローグ」
アメリカの食事といえば何を思い浮かべますか? ピザとコーラ? バーベキューでビール?
本当にアメリカ”らしい”のはもしかしたら、飲み物かもしれません。
牛乳
アングロサクソン人の常として、彼らは牛乳を大量に消費します。それゆえ、販売量もきわめて多くなります。
スーパーの1列全てが乳製品
ただでさえ巨大なスーパーの、長い列1面分がほぼすべて乳製品、ただし全て液体物です。つまり、牛乳、クリーム、オーツミルクやアーモンドミルクなどのPlant-Milk、以上。
牛乳といっても、日本で見るような3.8%なんてものはありません。基本は無脂肪、次に1%、少々2%。
そしてついでにビタミン添加が一般的です。
同時に、薄い牛乳に合わせるため……ではないでしょうが、クリームが大量に販売されています。面白いのはHalf and halfと呼ばれるもの。これは一般に液体を2種類等量に混ぜ合わせたものですが、乳製品に限って言えば牛乳とクリームです。
当然そのまま飲むものではありあせん。コーヒー・クリーマーの壮大なやつ、と言えるでしょう。
数ある牛乳の中で日本の牛乳に近いのは無調整牛乳か、2%のビタミンD添加牛乳です。
旨いのが飲みたかったら秋葉原駅総武線ホームのミルクスタンドに行きましょう。
量がおかしい
1米国液体ガロン=3.785412リットルとは、厳密な定義です。同時に、牛乳の販売単位でもあります。
洗濯洗剤のような、取っ手の付いたプラ製のボトルであり、サイズはざっくり牛乳パックを2×2で並べたような状態です。
一応日本人が馴染む量に近いクォーターガロンつまり0.95リットル程度のボトルも存在しますが、数は少ないですし、割高です。
Half and halfやクリームはこちらで売られることが多いですが……
当然ですが、冷蔵庫も1ガロンボトルが入るサイズで設計されています。
コーラ
アメリカといえばコーラ?だいたい正解です。味は予想外です。
まず味とカロリーがおかしい
アメリカのコーラは薄い、という話は有名です。これは何故かと言われれば、アメリカでは量を飲みすぎるからと言うほかありません。
栄養成分表示を見てみます。アメリカではこれをserving size、つまり1食分の量、という形で算出するのですが、米国のコカ・コーラのServing sizeは360ml、これで140カロリーです。一方日本では100mlあたり45カロリー。100mlあたり39カロリーとなり、数値上も健康的(とは?)であることが分かります。代償として味が薄くなります。
ちなみに、ゼロカロリーのものがあるのと同様にカフェインレスなんかも売られていますよ。
フレーバーもおかしい
1つのブランドに対して大量にフレーバーを用意するのも謎の文化です。コーラにはバニラ味、ブラックチェリー味、ブラックチェリー&バニラ味、などなど……
ドリンクバー的な機械で注ぐ場合はもっとフレーバーの幅があり、レモンやライムのみならずオレンジやイチゴといったさまざまなフレーバーシロップを投入することができます。シロップを追加するためどれも通常の味より甘ったるくなりますが、案外美味しいのが笑えない。
こんなのがあります。
コーラ以外にもファンタやSprite、Minute Maidなどさまざまな飲み物を提供するドリンクバー……ですが、それらに対してもフレーバー追加が可能です。しかも、機体自体はタッチパネル式で、氷や水も提供できるというハイテク仕様。その情熱はなんなんだ。
薄い薄いとばかり言っていますが、次回はもう少しわかりやすい飲み物の話をします。
「アメリカの食文化」シリーズ 飲み物-2につづく